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鹿のゆくえ
交信・声なき声を聴くためのレッスン
鹿のゆくえ

エゾジカを追って 十勝でのコール猟。

在本彌生+小野寺望

ARTIST
在本彌生+小野寺望

エゾジカを追って 十勝でのコール猟。

公開日:2021年2月12日

秋の北海道、十勝地方に降り立った。 小野寺が彼の元に弟子入りした狩猟女子の遠藤まやさんを連れ、地元の猟師と共にこの地域でコール猟をすると聞き、撮影させてもらうことにした。 北海道で繁殖している鹿は、小野寺さんが牡鹿半島で狙っているニホンジカとは種類の違うエゾジカだ。 鹿の姿、サイズもかなり違うので、当然肉質も違いそうだ。 その上何より土地のスケールの違いに改めて驚き圧倒された。 平地にしても、谷にしても、牡鹿半島で身についているスケール感ではとても動けない。 すなわち、獲物を狙うにしても、距離感を一度リセットしなければならない。 ここで3日間小野寺さんが鹿を追う姿を間近に捉えた。 いつもの小野寺さんなら狙った鹿がいたらたちまち急所に命中させそうなのだが、もう一歩のところで獲物を逃すケースが何度か続いた。 その様子から、猟場に慣れることがいかに大事なことなのかが素人の私にも強く伝わってきた。

  間近に感じていた鹿を逃すと、悔しくなる私がいて、自分の感情の動きの意外な反応に気づいた。 目で耳で感知した獲物に逃げられると無性に悔しくて、獲れるまではどうにも気が収まらない、そんな心持ちになってしまう… 動物の心理とはこんなものなのだろう。 狩猟の営みのなかで、自分自身の身体的、心理的反応を観察することになるのは非常に興味深いことだった。

背丈ほどもある笹の茂みにゆっくりと入って行き、傾斜のある谷を見下ろす位置にポジションをとったところで、小野寺さんは鹿笛を吹く。 雄の鳴き声を真似ている。 音を立てないように、目立たぬように、息を潜めて茂みの中で待つこと15分ほど、小野寺さんが一瞬にして銃を構えた。 私には全くどこにいたのかわからなかったが、雄の鹿がかなり近くまで歩み寄ってきていたそうだ。 しかし鹿のほうが一歩早くこちらに気づき、ガッサガッサと笹の葉を揺らしてあっという間に立ち去っていった。 この日はその後も何度か場所を変えて粘ってみたが、鹿を捉えることはできなかった。

翌日も平原で、山中で、小野寺さんは何度か鹿笛を吹いてみたが、なかなか思うようには狙っている大きな雄鹿には出会えなかった。 時期的な問題もあるが、毎日獲れるだけ獲ってしまうのは小野寺さんのスタイルではないということを、十勝に来ても忘れてはならないと思った。

PROFILE

作家紹介

在本彌生+小野寺望

YAYOI ARIMOTO + NOZOMU ONODERA

各地の衣食住の文化背景の中にある美を写真に収めるべく世界を奔走する写真家・在本彌生と、牡鹿半島でニホンジカの有害獣捕獲を担い、狩猟や野生食材などを採取しながら、食材の育つ背景を伝える食猟師・小野寺望によるリボーンアート・フェスティバルのためのプロジェクト。 ニホンジカの解体処理と牡鹿半島の自然の恵みを伝える拠点「FERMENTO(フェルメント)」を舞台に、野山に入り、野草を摘み、生き物を追い、それを生きる為の糧にする小野寺の生き方を在本が写真で捉える。

在本彌生
1970年東京生まれ。写真集に『Magical Transit Days』(アートビートパブリッシャーズ)、『わたしの獣たち』(青幻舎)、『熊を彫る人』(小学館)がある。

小野寺望
1967年気仙沼市生まれ。石巻市在住。宮城県猟友会石巻支部所属。「Antler Crafts(アントラークラフツ)」として活動。2017年よりリボーンアート・フェスティバルに関わり、「FERMENTO」の運営を任されている。

ART WORK

秋のコール猟と鹿肉を昇華させる料理人たち

ONLINE PROJECTS

現在オンラインで公開中の作品

ARTIST

参加アーティスト一覧

OUTLINE

開催概要

Reborn-Art Festival 2021-22
— 利他と流動性 —

【 会期 】

オンライン : 2021年1月6日(水) 〜
夏 : 2021 年 8 月 11 日 (水・祝) ~ 2021年 9 月 26 日(日)
春 : 2022 年 4 月 23 日 (土) ~ 2022年 6 月 5 日(日)
※会期中メンテナンス日(休祭日)を設けます。

【 メイン会場 】

ー 夏 ー
2021年
石巻市中心市街地
牡鹿半島(桃浦、荻浜、小積浜、鮎川、and more...)

ー 春 ー
2022年
石巻地域

【 主催 】

Reborn-Art Festival 実行委員会
一般社団法人APバンク

【 助成 】

文化庁 国際文化芸術発信拠点形成事業

【 翻訳 】
hanare × Social Kitchen Translation(英語)
小山ひとみ、吴珍珍(中国語簡体)、陳 兪方(中国語繁体)

【 Web Direction 】
加藤 淳也
(PARK GALLERY)

この情報は2021年3月20日時点のものです。
新型コロナウイルスの影響等でやむを得ず変更する場合があります。
あらかじめご理解をいただければと思います。
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