© Reborn-Art Festival
秋の牡鹿半島にて、コール猟に同行する。
在本彌生+小野寺望
ARTIST
在本彌生+小野寺望
秋の牡鹿半島にて、コール猟に同行する。
公開日:2021年1月6日
2019年の春から夏にかけて、食猟師の小野寺望さんとユニットを組み、小積エリアでの小野寺さんの鹿狩猟を追って写真を撮影しました。 鹿を追って撃ち、精肉するまでの一連の作業を見て体験したことで、野生の鹿が我々人間の口に入る「肉」になるまでに、これほど多くの労働と過程があることや、鹿を滅多に撃たない小野寺さんの、鹿だけでなく自然全体に対する思いの一旦を私も体感し、写真に収めることができました。
今年は、さらに山に生きる鹿の命をいただくことへの理解を深めるため、秋口に鹿笛を使って猟をする「コール猟」に、石巻と北海道の大樹町で二度同行撮影しました。 昨年撮影していた巻狩り、忍び猟よりもさらに原始的かつ五感で勝負するコール猟は、究極の心理戦でもあります。 また、そうして仕留められたありがたい鹿の肉が、小野寺さんからどんな料理人に渡され、どんな料理に昇華されているのかを目撃するべく、全国各所にある小野寺さんと取引のある料理店の厨房を訪れ、料理人たちの受け止めている小野寺さんの鹿肉の手応えを取材することにしました。
秋の牡鹿半島にて、コール猟に同行する。
昨年の小野寺さんの猟を追ってその様子を撮影していたのは春の終わりから夏にかけての時期。 怪我や蛭対策のために長靴とズボンをガムテープで貼り付け、手ぬぐいを首に巻いて隙間を塞いで挑んだ。この装備、山を歩いていると結構暑い。 それにもかかわらず、どこから侵入されたのか蛭に腹を食われ、自らの血が止まらないのを見てギョッとしたのは、鹿猟にまつわる貴重な体験となった。 今年は昨年とは時期を変え、鹿の繁殖期にあたる秋の一定期間だけに行われる「コール猟」に同行し、その様子を撮影した。
「猟のスタイルの中でもコール猟が一番好き」という小野寺さん、その面白さはどこにあるのだろう。 それを私も実感してみたいとおもった。
手始めに山の様子を見に行く気持ちで歩いた。 山に入ってみると、鹿よりも前に、大きな白いきのこを見つけた。「これは大銀杏茸、焼いて醤油で食ったら最高だよ。」力士の大銀杏に似ていることからその名前がついているそうで、なるほど、本当に大きくて立派な美しいきのこだ。ほんのわずかな期間しか見つけられないという香り高い大銀杏茸、どんな味がするのだろう。 食べる分だけ収穫した。
「これが雄鹿の鳴き声」そう言って小野寺さんが山の中で鹿笛を吹いた。「キュウーーーッ、キュウーーーッ」
繁殖期の鹿の雄は何頭も雌を従えハーレムをつくっているという。他の雄が鳴き声でその存在を主張すると、自分のハーレムを荒らしに来たライバルと感知し、追い払おうと近寄ってくる。 その習性を使って鹿の鳴き声を鹿笛で真似て雄鹿をおびき寄せるのがコール猟の主な手法なのだが、この猟、「じっと待つこと」がほとんどの時間と言っていい。 鹿笛を吹いてから身を潜めて、待つ、待つ、待つこと15分くらいだろうか。 山の中を歩くのは気分のいいものだが、ただひっそりとしゃがんで山の中で身を固めると、風の強さや方向、匂い、音に、自分がどんどん反応できるようになっていくのがわかる。 普段五感が感じているはずの微かな情報をどれだけ無視しながら過ごしているかがわ露わになる。 いや、むしろ人や動物に備わった感覚とは、死んでしまわずにただ眠っていて、状況に応じて目覚めるものなのだと思った。「自らが鹿になる、野性を呼び覚ます」それがコール猟の魅力なのだろう。 山のヘリにしゃがんで、谷底を介して向こう側の山の斜面に鹿を見た。 あっと思う間に鹿は樹々の影に消えたように見えたが、小野寺さんはそれを見逃さない。 バーンッという銃声が一発。「当たったはずだから、ちょっと見てくるわ」と、小野寺さんはあっという間に山を下って谷底をかけ上がり、反対側の木立ちの奥に消えた。 私に見えていなかったものを小野寺さんは撃ったようだ 。20分くらいして(この大きな急斜面を降りて登って往復したタイムとしてはすこぶる早い)、ひたいに汗をにじませて小野寺さんが戻ってきた。 撃った鹿を鳥たちに狙われないように隠してきたと言う。 急いで車で対岸の山の傍まで行った(谷を突っ切らずに道路を通っていくと車で15分もかかる道のりだった)。 木立ちの中、急な斜面を降りていくと、鹿が枯葉で覆われ横たわっていた。
在本彌生+小野寺望
YAYOI ARIMOTO + NOZOMU ONODERA
ARTIST
在本彌生+小野寺望
秋の牡鹿半島にて、コール猟に同行する。
公開日:2021年1月6日
昨年の小野寺さんの猟を追ってその様子を撮影していたのは春の終わりから夏にかけての時期。今年は昨年とは時期を変え、鹿の繁殖期にあたる秋の一定期間だけに行われる「コール猟」に同行し、その様子を撮影した。 … もっと読む
ARTIST
在本彌生+小野寺望
エゾジカを追って 十勝でのコール猟
公開日:2021年2月12日
秋の北海道、十勝地方に降り立った。 小野寺が彼の元に弟子入りした狩猟女子の遠藤まやさんを連れ、地元の猟師と共にこの地域でコール猟をすると聞き、撮影させてもらうことにした。 …もっと読む
ARTIST
在本彌生+小野寺望
料理人たちが手にする
小野寺さんの鹿肉 part1
メツゲライクスダ 楠田シェフ
公開日:2021年3月19日
鹿について学ぶ会が北海道は十勝の「MEMU EARTH HOTEL」で行われた。フィールドでの小野寺さんの猟の様子を先の記事で紹介しているが、この時、鹿の精肉や加工について詳しくお話をしてくださったのが楠田シェフだった。 … もっと読む
ARTIST
在本彌生+小野寺望
料理人たちが手にする
小野寺さんの鹿肉 part2
maruta 石松シェフ
公開日:2021年3月26日
Maruta は東京、調布の閑静な住宅街の中にある。 建物は決して小さくはないのだが洒落た邸宅といった佇まいで、街の景観にしっくりと馴染んでいる。 建物の裏手には広々とした菜園が広がっていて、ここで収穫される野菜やハーブが料理に盛り込まれる。 … もっと読む
ARTIST
在本彌生+小野寺望
料理人たちが手にする
小野寺さんの鹿肉 part3
Vin et cuisine ヒヒヒ 伊藤シェフ
公開日:2021年3月26日
宮城県内のレストランで活躍する料理人たちは、牡鹿半島の山の自然の現状を知り知識を深めるべく、小積の鹿肉処理場『FERMENTO』に度々集っている。 処理場周辺の環境を整えたり、鹿肉の解体を体験したりといった活動は、料理人の彼らが料理の現場で手にする肉の背景を知る絶好の機会だ。 … もっと読む
血を受け取る
ARTIST:淺井裕介
ARTIST:
淺井裕介
2 血で描く / 再び森へ
公開日:2021年3月30日
ここから先は言葉による説明は無しにして、作ったものをいくつか厳選し公開します。 鹿たちから受け取ったものが変化した作品をいつかどこかで生で見てもらえますように。 今後も開かれてしまった入口をゆっくりじっくり進みながら、鹿との対話を続けていこうと思う。 作品を見る
MAKE A BIOTOPE
ARTIST:志賀理江子
ARTIST:
志賀理江子
VOL.3 「たべるものをつくる」
映像:18分45秒
公開日:2021年3月28日
2020年11月にビオトープの池を掘る工事をした4ヶ月後2021年3月、牡鹿半島に春の兆しがやってきた。ビオトープは長い冬の間、湧き出る水や雪などによる水位を様々に変えた。 作品を見る
秋のコール猟と鹿肉を
昇華させる料理人たち
ARTIST:在本彌生+小野寺望
ARTIST:
在本彌生+小野寺望
『Vin et cuisine ヒヒヒ』 伊藤久之シェフ
公開日:2021年3月26日
宮城県内のレストランで活躍する料理人たちは、牡鹿半島の山の自然の現状を知り知識を深めるべく、小積の鹿肉処理場『FERMENTO』に度々集っている。 処理場周辺の環境を整えたり、鹿肉の解体を体験したりといった活動は、料理人の彼らが料理の現場で手にする肉の背景を知る絶好の機会だ。 作品を見る
秋のコール猟と鹿肉を
昇華させる料理人たち
ARTIST:在本彌生+小野寺望
ARTIST:
在本彌生+小野寺望
『Maruta』 石松一樹シェフ
公開日:2021年3月26日
Maruta は東京、調布の閑静な住宅街の中にある。 建物は決して小さくはないのだが洒落た邸宅といった佇まいで、街の景観にしっくりと馴染んでいる。 建物の裏手には広々とした菜園が広がっていて、ここで収穫される野菜やハーブが料理に盛り込まれる。 作品を見る
秋のコール猟と鹿肉を
昇華させる料理人たち
ARTIST:在本彌生+小野寺望
ARTIST:
在本彌生+小野寺望
『メツゲライクスダ』 楠田裕彦シェフ
公開日:2021年3月11日
鹿について学ぶ会が北海道は十勝の「MEMU EARTH HOTEL」で行われた。 フィールドでの小野寺さんの猟の様子を先の記事で紹介しているが、この時、鹿の精肉や加工について詳しくお話をしてくださったのが楠田シェフだった。 作品を見る
その後の物語
ARTIST:堀場由美子
ARTIST:
堀場由美子
風をとらえるもの #03
公開日:2021年3月9日
数年前から少しづつ、冬の渡り鳥の道であるフライウェイを巡り、観察しながら作品となる羽根を拾い集めています。小積にはじめて訪れたときに私が目にした光景も、渡り鳥から繰り広げられるものでした。 作品を見る
Cocoon
ARTIST:坂本大三郎+大久保裕子
ARTIST:
坂本大三郎+大久保裕子
Cocoon
映像:10分
公開日:2021年3月8日
遥かむかし、列島に海を渡ってやってきた人たちがいました。 彼らは金属を求めて、深い山々へわけいり、そこに山岳信仰がうまれました。作品を見る
やがて、鹿は人となる/やがて、人は鹿となる
ARTIST:津田直
ARTIST:
津田直
やがて、鹿は人となる/やがて、人は鹿となる
公開日:2021年3月5日
今季は Reborn-Art Festival 2019『やがて、鹿は人となる / やがて、人は鹿となる』の続編として、同タイトルを紐解くように、二年に亘って通い続けた東北への旅を通じて、綴ってきた言葉と写真を編み、発表します。 作品を見る
血を受け取る
ARTIST:淺井裕介
ARTIST:
淺井裕介
血を受け取る
1 — その日の日記
公開日:2021年2月22日
これは Reborn-Art Festival に参加した後に、これまで素材として向き合ってきた、マスキングテープ、現地の土、小麦粉、道路用の白線に次ぐ第5の素材、「鹿の血」との出会いの記録です。 テキスト、記録写真と制作物の作品の写真、動画などを此処で公開します。 作品を見る
MAKE A BIOTOPE
ARTIST:志賀理江子
ARTIST:
志賀理江子
VOL.2 「DIALOG IN THE FOG」
公開日:2021年2月20日
狩猟で仕留めた鹿を解体し、食肉として処理加工する施設『フェルメント』。その『フェルメント』の運営を仕切る食猟師小野寺望さんへのインタビューです。 作品を見る
その後の物語
ARTIST:堀場由美子
ARTIST:
堀場由美子
風をとらえるもの #02
映像:6分56秒
公開日:2021年2月18日
数年前から少しづつ、冬の渡り鳥の道であるフライウェイを巡り、観察しながら作品となる羽根を拾い集めています。小積にはじめて訪れたときに私が目にした光景も、渡り鳥から繰り広げられるものでした。 作品を見る
秋のコール猟と鹿肉を
昇華させる料理人たち
ARTIST:在本彌生+小野寺望
ARTIST:
在本彌生+小野寺望
エゾジカを追って 十勝でのコール猟。
公開日:2021年2月12日
秋の北海道、十勝地方に降り立った。 小野寺が彼の元に弟子入りした狩猟女子の遠藤まやさんを連れ、地元の猟師と共にこの地域でコール猟をすると聞き、撮影させてもらうことにした。 作品を見る
いつかあなたになる(2019)
ARTIST:坂本大三郎+大久保裕子
ARTIST:
坂本大三郎+大久保裕子
いつかあなたになる(2019)
映像:31分
公開日:2021年1月6日
この作品は、芸術や芸能のはじまりに触れようとする山伏の坂本大三郎とダンサーの大久保裕子によるプロジェクトです。 作品を見る
血を受け取る
ARTIST:淺井裕介
ARTIST:
淺井裕介
血を受け取る
序 — 何で描くのか?
公開日:2021年1月29日
これは Reborn-Art Festival に参加した後に、これまで素材として向き合ってきた、マスキングテープ、現地の土、小麦粉、道路用の白線に次ぐ第5の素材、「鹿の血」との出会いの記録です。 テキスト、記録写真と制作物の作品の写真、動画などを此処で公開します。 作品を見る
MAKE A BIOTOPE
ARTIST:志賀理江子
ARTIST:
志賀理江子
VOL.1 WHY BIOTOPE
November 2020
映像14分
公開日:2021年1月6日
2019年夏、リボーンアートフェスティバルにて制作された作品 “Post Humanism Stress Disorder” には、東日本大震災の津波の塩害によって枯れ、伐採される予定だった杉の木々と、産業廃棄物に指定された牡蠣殻が素材に使われています。 あれから1年半が経った今、それらを再利用し、牡鹿小積浜の鹿肉解体処理施設「フェルメント」の裏手にビオトープを作ることになりました。 作品を見る
その後の物語
ARTIST:堀場由美子
ARTIST:
堀場由美子
風をとらえるもの #01
公開日:2021年1月6日
数年前から少しづつ、冬の渡り鳥の道であるフライウェイを巡り、観察しながら作品となる羽根を拾い集めています。小積にはじめて訪れたときに私が目にした光景も、渡り鳥から繰り広げられるものでした。 作品を見る
秋のコール猟と鹿肉を
昇華させる料理人たち
ARTIST:在本彌生+小野寺望
ARTIST:
在本彌生+小野寺望
秋の牡鹿半島にて、コール猟に同行する。
公開日:2021年1月6日
昨年の小野寺さんの猟を追ってその様子を撮影していたのは春の終わりから夏にかけての時期。 今年は昨年とは時期を変え、鹿の繁殖期にあたる秋の一定期間だけに行われる「コール猟」に同行し、その様子を撮影した。 作品を見る
開催概要
Reborn-Art Festival 2021-22
— 利他と流動性 —
【 会期 】
オンライン : 2021年1月6日(水) 〜
夏 : 2021 年 8 月 11 日 (水・祝) ~ 2021年 9 月 26 日(日)
春 : 2022 年 4 月 23 日 (土) ~ 2022年 6 月 5 日(日)
※会期中メンテナンス日(休祭日)を設けます。
【 メイン会場 】
ー 夏 ー
2021年
石巻市中心市街地
牡鹿半島(桃浦、荻浜、小積浜、鮎川、and more...)
ー 春 ー
2022年
石巻地域
【 主催 】
Reborn-Art Festival 実行委員会
一般社団法人APバンク
【 助成 】
文化庁 国際文化芸術発信拠点形成事業
【 翻訳 】
hanare × Social Kitchen Translation(英語)
小山ひとみ、吴珍珍(中国語簡体)、陳 兪方(中国語繁体)
【 Web Direction 】
加藤 淳也
(PARK GALLERY)
この情報は2021年3月20日時点のものです。
新型コロナウイルスの影響等でやむを得ず変更する場合があります。
あらかじめご理解をいただければと思います。
最新情報は随時当ウェブサイトをご確認ください。